この記事では、クリストファー・クロスの”Arthur’s Theme“(邦題「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」)の歌詞に出てくる英語表現を解説しています。日本語の感覚では解釈しづらい歌詞を英語ネイティブのバイリンガル、アミノくんと一緒に見ていきます。
月とニューヨークシティの狭間で身動きが取れないときは、なんて、おかしいよね、でも本当のことなんだ
そんな謎解きのようなちょっとロマンティックな「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」の歌詞の意味を紐解いていきます。
曲を聴く
“Arthur’s Theme (Best That You Can Do)” – Christopher Cross
この曲は1981年に公開されたアメリカ映画「Arthur」(邦題「ミスター・アーサー」)の主題歌で、歌詞に映画のストーリーが反映されている。
<映画のあらすじ>
アーサー(Arthur)はニューヨークに住む大富豪の御曹司。家の莫大な財産のおかげで何不自由なく飲んだくれて生きている彼は、世間知らずな子供のような言動で周囲を呆れさせる。そんなある日、アーサーは家族に縁談を勧められ、結婚しなければ遺産をあげないと言われてしまう。財産欲しさに好きでもない相手との結婚を承諾したが、結婚式が差し迫る中、街で知り合った万引き犯のリンダと恋に落ちて、彼の気持ちと人生に変化が訪れる。
アーサーとリンダとの間には、境遇に大きな隔たりがある
そこらへんも歌詞に反映されているね
この曲の歌詞は映画のあらすじがわかるくらいストーリー性があるのね
よくこんな上手い表現を思いついたなって感心する!
「NYシティと月の間で身動きが取れない」は実話だった!
クリストファー・クロスの”Arthur’s Theme“で一番印象的なのは、サビの歌詞ではないでしょうか。
「NYシティと月の間で身動きが取れないなら、恋をするのが一番」ってどういう意味なんだろ?
サビのこのフレーズは、歌詞の冒頭のフレーズにリンクしているよ
どういうこと?!
まずは、「NYシティと月の間で身動きが取れない」の意味から紐解いていこう
作者が語る歌詞の真実
“Arthur’s Theme“のサビの歌詞
When you get caught between the moon and New York City
Christopher Cross “Arthur’s Theme“より
「月とNYシティの狭間で身動きできない」という、この現実離れした謎解きのような歌詞はどういう意味なのか、作詞したPeter Allenがあるインタビューで説明しています。
How do you get “caught between the moon and New York City”? According to Peter Allen, he came up with the line when his plane got stuck in a holding pattern waiting to land at JFK airport in New York.
<日本語訳>「NYシティと月の間で身動きが取れない」をどう解釈するのか?ピーター・アレンによると、JFK国際空港の上空でホールディングパターンのために足止めを食らったとき、このフレーズを思いついたのだそう。
※参考のためにうさミミ英語で日本語訳をつけています。
ホールディングパターンとは、空港の滑走路が混雑しているために、飛行機が空中で旋回し続けながら着陸の順番を待つこと
飛行機が着陸できずに旋回し続けて、ニューヨークシティの上空で身動きが取れなくなってしまったピーター・アレン。
そのとき、同じ飛行機に乗務していたキャビンアテンダントが、当時のことをSongfacts®のインタビューで語っています。
In 2012, Songfacts® heard from the flight attendant Susan Lina, who said, “Peter Allen was on my flight and when he was deplaning he said to me, ‘You have inspired me to write a song, and you will know it when you hear it.’
He was right, I did know the moment I heard the verse, when you get caught between the moon and New York City, because it was at night and we were in a holding pattern to land at JFK. I remember it so clearly.”
<日本語訳>
2012年、Songfacts®は客室乗務員のスーザン・リナから話を聞きました。「私が乗務する便にピーター・アレンが乗っていて、彼は降機するときに『君のおかげで曲が書けるよ、その曲がどれか、聴けば君にはわかるだろう』と言いました」
「彼の言ったとおりでした。『NYシティと月の間で身動きが取れないとき』という歌詞を聞いた瞬間にわかったんです。私たちがJFK国際空港の着陸待ちで待機したのは夜でしたから。すごくハッキリと覚えています」
※参考のためにうさミミ英語で日本語訳をつけています。
ピーター・アレンはJFK国際空港行きの夜のフライトで、飛行機が着陸できず、空で立ち往生してしまいました。
その状況下で、ちょうど乗務していた自分の好みのキャビンアテンダントからインスピレーションを得て、「NYシティと月の間で身動きが取れない」というフレーズを思いついたというわけですね。
「NYシティと月の間で身動きが取れない」というのは、本当にあった話だった!
歌詞の中で「I know it’s crazy, but it’s true」って言ってるね
もうその通り。何を言っているんだと思ったけど、なるほど、そういうことかと
ピーター・アレンはこのフレーズを暗喩として曲の中で使っている
When you get caught between the moon and New York City.
Christopher Cross “Arthur’s Theme“より
この歌詞の意味はのちほど解説します!
どんなことを歌っているの?
クリストファー・クロスの”Arthur’s Theme“は、映画「Arthur」で描かれているストーリーをコンパクトにまとめたような歌詞です。
映画のストーリーの要点を押さえて曲を聴くと、歌詞の意味がわかりやすいでしょう。
- アーサーはお金持ちの家に生まれた
- 親のスネかじりで世間知らず
- 周りからは「大人になれ」と言われることもしばしば
- 自分と生まれも育ちも境遇も正反対の女性と恋に落ちる
- その恋をきっかけに、今までにない新しい体験をする
- 気づけば、アーサーの心や人生に変化が起きていた
- 最終的に愛する女性と新しい人生をスタートさせる
歌詞は上記のポイントを網羅しているよ
英語のニュアンスをつかむ
ここからは、歌詞全体を見て、英語の意味とニュアンスを掴んできます。
「town」を「人生」と解釈する
クリストファー・クロスの”Arthur’s Theme“は、歌詞の中に出てくる単語「town」の解釈の仕方で、歌詞全体の意味が見えてきます。
うさミミ英語では、「town」を「人生」と解釈します。
この曲の中に、「town」は2回出てきます。
「town」その1
歌の冒頭に出てきます。
Once in your life you find her
Someone that turns your heart around
And next thing you know
You're closin' down the town
Christopher Cross “Arthur’s Theme“
君の心を一変するような
運命の女性とひと度出会ったら
気づいたときには
君は自分の住む町を閉鎖しているだろうね
1つ目の「the town」は「その町」ってことで、彼が今住んでいる街のことかな?
そうだね。「closin’ down the town=今住んでいる町を閉鎖しているだろう」という歌詞
closin’ down the townは暗喩なの?
うん。End of a particular situation(特定の状況の終わり)ということだと思う
その根拠は?映画のストーリー?
そうだね。アーサーは親の財産に依存する生活を維持していくために、家族が決めた戦略結婚を受け入れる方向で動いていた
それが、リンダと恋をして、状況が一変した!
Linda became so important to him that it marked the end of his normal life (situation).
アーサーにとってリンダがあまりにも大切な存在になったことで、彼の今までの人生が終わりを告げることとなった
そう解釈すると、歌詞全体のつじつまがあうんだ
「town」その2
Wake up and it's still with you Even though you left her way 'cross town
Christopher Cross “Arthur’s Theme“
町のずっと離れた場所に彼女を置いてきたのに
朝起きてまだ余韻に浸ってる
you left her way ‘cross townは、直訳すると、彼女を町のずっと遠い反対側に置いてきたということよね?これも暗喩かな?
そうだね。これもtownを「人生」と解釈して考えてみよう。アーサーは高級住宅に住む上流社会の人で、リンダはその真逆。同じ町に住んでいても、way across town、つまり、彼女の人生や現状は彼のそれとは程遠いってこと
なるほど~。じゃあ、1番の歌詞の意味をまとめると?
君の心を一変するような運命の女性に出会ったら、君はいつのまにか自分の今までの人生を終わらせているだろう
同じ町に住んでいても、君とはかけ離れた人生を生きている彼女なのに、君は朝目覚めるとまだ彼女との余韻に浸っている、「これはどういう出会いなんだろう?」と自問しながら
彼の人生は誰のおもちゃ?
2番の歌詞の中に次のようなフレーズが出てきます。
All of his life his master’s toys
Christopher Cross “Arthur’s Theme“
「彼の人生は彼のmasterのおもちゃ」ということですが、masterとはいったい誰のことでしょうか?
これ、ピンときちゃった。サビの「月」がこのmasterの象徴になっていると思う!
解説たのむ
masterはご主人様って意味だけど、アーサーにとっては、彼の人生を左右する「家、家族」であり、それは彼が自分では選べない「運命」のことだと思う
All of his life his master’s toysは「彼の人生は完全に運命に操られている」みたいな訳になるかな
「運命」は天から与えられたもので、この歌の中では、天に浮かぶ月が運命の象徴になっているんじゃない
そこまで解釈できたら、サビの解釈はすぐにできるね!
月とニューヨークシティの狭間とは?
サビの歌詞を見てみます。
When you get caught Between the moon and New York City Best that you can do Best that you can do Is fall in love
Christopher Cross “Arthur’s Theme“より
ニューヨークシティと月の狭間で 身動きが取れないなら 君に出来る最善策は 君に出来る最善策は 恋に落ちることだよ
じゃあ、うさみ、解説おねがい
天のthe moon(月)=天から与えられた運命(彼が生まれ持って与えられた財産や家系など)のことを指していて、New York City=the townはアーサーの生活圏でアーサーの人生を象徴している
つまり、「自分の運命と人生のギャップに悩んで八方ふさがりになったときは、恋をするのが一番の解決策だよ」という意味
なぜなら、恋をすれば、気づいたときには今までの人生を終わらせていて、新たな人生を歩み始めることができるから
冒頭の歌詞にある「Once in your life you find her and next thing you know, you’re closin’ down the town」が起こるということだね
映画「Arther」のストーリーでもある!
歌詞全体の意味まとめ
君の心を一変するような運命の女性に出会ってしまったら、君はいつのまにか自分の今までの人生を終わらせているだろう
同じ町に住んでいても君の人生とは程遠い人生を生きている彼女だけど、朝目覚めるとまだ彼女と過ごしたことの余韻に浸っている、「これはどういう出会いなんだろう?」と自問しながら
運命のおもちゃにされっぱなしの彼の人生
もし、自分の運命とこれまでの人生の狭間で悩んで身動きができなくなったら、恋をするのが一番だよ
(いつの間にか、新たな人生を歩み始めているから)
英語ワンポイントレッスン
Once+主語+動詞
Once in your life you find her
あなたの人生で、彼女とひとたび出会ったら
Christopher Cross “Arthur’s Theme“
once 主語+動詞=ひとたび~したら、~してしまえば
Once you finish your homework, you can go outside and play with your friends.
宿題を終わらせてしまえば、外に行って友達と遊べるよ。
next thing you know
next thing you know
気づいたときには
Christopher Cross “Arthur’s Theme“
next thing you knowは、気づかないうちに何かが起こっているときや状況が変わっているときに使われます。
決まった言い方だから、まるごと覚えちゃおう
I was scrolling through my phone, and the next thing you know, an hour had gone by.
携帯電話いじってて、気づいたら1時間経ってたよ。
歌詞の全文和訳
クリストファー・クロスの “Arthur’s Theme“(邦題「ニューヨークシティ・セレナーデ」の和訳は、『洋楽の歌詞を和訳しているブログ』で公開しています。